大判例

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横浜地方裁判所 昭和44年(ワ)398号・昭44年(ワ)976号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕<証拠>によれば、被告会社は貨物自動車運送業を目的として昭和四〇年二月一二日設立された資本金一七〇万円の有限会社であること、その役員には被告木村の外、同被告の母木村マス、弟木村勝美が就任したが、被告会社の実際の業務は訴外長谷川勇が中心になつてやつていたこと、被告木村はその本業である鮮魚商に主として従事していたものの、なお被告会社の運営にも最終的な責任者として関与していたことがそれぞれ認められる。

被告木村が単に被告会社の代表取締役であつたことをもつて、直ちに「使用者に代わつて事業を監督する者」に該当するということはできないにしても、上記認定の如く、被告会社はその実質は被告木村の個人会社とも云うべき小企業であり、しかも被告木村はその運営に関与していたのであるから、このような場合やはり代理監督者として責任を負うことを免れないものと解すべきである。

二、<証拠>を総合すれば、原告留吉が右大腿骨及び下腿骨々折、左下腿骨々折、骨盤骨折、右第四、第五肋骨々折、左頬骨々折、第五腰横突起骨折、睾丸破裂の傷害を負つたこと、また後遺症として右下肢、左足関節の拘縮と両側外傷性感音難聴(右耳中程度、左耳障害高度のため測定不能)があり、そのため同年四月二八日迄済生会神奈川県病院に通院治療したこと、これはいずれも身体障害者福祉法別表の第六級に該当すること、更に睾丸脱出(両側)片側破裂のため生殖能力を完全に失なつたことがそれぞれ認められる。

後遺症のうち、睾丸両側脱出、片側破裂による生殖能力の完全な喪失は一応自動車損害賠償法施行令別表の第七級の一三「両側の睾丸を失つたもの」に準じて考えることができるが、それをもつて直ちに原告留吉の労働能力の喪失率が五六パーセントであると云うことはできない。

しかし、同原告は右下肢、左足関節の拘縮のため歩行も充分でなく、両側外傷性感音難聴もあり、右症状はいずれもほぼ固定し、現状以上の回復は困難なのであるから、同原告が正確、且つ敏速な操作の要求されるタクシー運転手として復帰できるとは到底考えられない。

現に同原告は再び前記港タクシー株式会社に勤務してはいるものの、運転手としてではなく、雑用係でしかないこと、また本件事故当時から同社に勤務する原告の同僚は現在七万円ないし八万円の給料を得ていることが認められる。

以上を総合すれば原告留吉の労働能力喪失率はやはり五六パーセントと考えるのが相当である。

原告A子は同Bの妻であるが、同原告の前記後遺症のため夫婦関係を結ぶこともできないことにより、夫婦生活は全く破壊され、このため原告A子の受けた精神的苦痛もまた甚だ大きく、これに対する慰藉料としては金三〇万円が相当である。 (若尾元 石藤太郎 西理)

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